いつもの年と同じように、何かがあり、何かがないだけなのに、去年は世紀末、今年は新世紀元年らしい。とは言うものの、色々ありました。社会の記憶に残り、建築に関係するものをあげると国内では、新宿雑居ビル火災、世界ではワールドトレードセンターの事件でしょうか。少しだけ建築の側面から考えてみましょう。
新宿火災は日本全国どこでもあり得る話でしょう。建物は完成した後、施主（所有者）の意識次第で天国にも地獄にもなり得ます。比較的規模の小さい飲食関係の雑居ビルなどはいい例なのです。そこで行われる、ある行為（特に内外装や用途の変更）が何に影響を及ぼし、結果としてどんな事柄を引き起こすのか、想像できない人は手を出すべきではないでしょう。それが、生命に関わるからです。ちょっとした事柄が積重なって、大きい悲劇が生まれます。設計者としては安全な建物を創る事、そして安全性や遵法精神の必要性を施主に伝える事が重要でしょう。又、利用者としてはそういう所には近づかない様、心掛けるしかないでしょう。
もう一つのWTC。これは、建築に関わる身としては衝撃でした。日系米人建築家ミノル・ヤマサキの手による、アメリカの経済と技術のモニュメントが一瞬にして崩れ去ったのです。あたかも、砂が崩れるかのように。その後、各方面で分析され、日本の超高層では構造・工法が異なり、大丈夫と言われています。そういえば、外国で大きい被害を生んだ地震があるたびに、日本では大丈夫と言われて来ました。構造が違う、と。ところが、外国以上の被害が起きました。そして、想定を超す応力が加わったから、と。私たちの廻りでは、多くの、そして大きい想定外の事柄が起きる様です。その様な大きい事柄に関わる事のない身としては、これまで、あるいは今後関わるであろう夫々の家庭に、想定外が起こらない様に努めたいものです。夫々の立場で必要な事柄の認識が大切なのでしょう。
2002年が平穏であることを。